ストーリー 永遠のロマンを旅して見つけたものは、<永遠>でした。

 桃子(鈴木杏樹)は、明るく姉御肌のアラフォー女性。メガネ販売店の八戸店で店長を務めている。それまで住んでいた実家のある弘前から転勤を機に八戸に越してきたばかりだが、既に店の後輩の桜達から頼られ慕われる存在となっていた。だが彼女の心の奥には、どうしても抜けない棘があった。実は彼女は、不幸な離婚を経験し、心に深い傷を負って、人生を前に進ませる勇気が持てずにいたのだ。

 そんなある日、桃子は、若い桜(武田梨奈)に誘い出され、しぶしぶ街コン風地酒パーティに参加する。「人数合わせ要員でバツイチ」とおどけて名乗った桃子の前に遅れて現れたのは、40代後半の無精髭の男、佐久間五朗(宇梶剛士)。あだ名はクマゴロウ。桃子は、彼を見たとたん、遠い記憶が一瞬蘇ったような感じに襲われ、驚き戸惑う。彼女が感じたのは、子供の頃から時々見ていた不思議な夢の中の、太古の森を通る風の感触だったのだ。

 クマゴロウは、遺跡発掘一筋の考古学研究員だった。一万年以上の間、平和に続いたという縄文時代に対する彼の畏敬の念は深く、語り出したら止まらない。その夜、いつになく飲み過ぎて、無骨で不器用なクマゴロウにからんでしまった桃子は、翌日、じわじわと記憶が戻ると、自身の失態に頭を抱えた。だがクマゴロウは、酔った桃子の支離滅裂な言葉――「八戸が弘前よりいいとこだって言うなら、私を納得させてよ!」――を律儀に受け止め、数日後、本当に八戸の街を案内してくれるのだった。

 陸奥湊駅前朝市や蕪嶋神社など八戸の様々な場所を巡る二人。地元の人達に愛されているクマゴロウは、どこに行っても声を掛けられている。だが彼が縄文時代の話を始めたとたん、桃子の脳裏にまたもや深い森のイメージが浮かぶのだった。不思議そうなクマゴロウに、桃子は子供の頃から見ている太古の森の夢のことや、クマゴロウと出会った瞬間に感じた風の感触を語る。すると彼は、縄文時代の夢ではないかと羨ましがり、自身の職場である是川縄文館に桃子を連れて行ってくれた。クマゴロウが桃子に見せたのは、八戸から出土した国宝の合掌土偶だった。

 「縄文時代の人達って、生きるために必要なもの全部を持っていたんじゃないかしら」
何気なくそう言った桃子に、まさにその通りとばかり、クマゴロウは嬉しい驚きを見せた。そして縄文時代の代弁者として、何か表現してみることを勧めるのだった。

 数日後、クマゴロウに教えてもらいながら、是川遺跡で発掘作業を体験した桃子は、土器の欠片を発見し、同じこの場所で生きた人々の命を感じ、さらには、その土地と繋がった不思議な感覚に捕らわれるのだった。

 桃子は、夢の風景をイラストに描き始めた。縄文時代の衣装をまとい、弓を手にした少女の姿や風が抜ける深い森・・・。何枚か描き上がったものをクマゴロウに見せると、彼は、感動で涙ぐむ。彼がつけてくれた少女の名は、ライア――古代ギリシャの竪琴。

 だが“縄文時代”が繋いだ心豊かな時間をクマゴロウと共有しながらも、桃子は、本気で恋することに臆病なままだった。何かと桃子を慕ってくる桜にだけは、誰にも言えなかった離婚の原因と心の痛みを打ち明けていた。それは、クマゴロウとの未来に踏み出すことをためらわせている原因でもあった。

 そんなある日、クマゴロウは、縄文晩期の日本と交流があった可能性のあるベトナムへと調査に飛ぶ。手首には、桃子が編んで「お守り」としてつけてくれたミサンガをつけて。ベトナムの島に赴いたクマゴロウは、皆が共に笑って暮らせることが願いだという部族長の姿に、縄文時代のシンプルで心豊かな生き方に通じるものを感じ、感動する。彼は、部族長に問う。「人間として一番大切なことは何ですか」 

 だがその答えは、皮肉にも桃子の心の傷を思い出させるものとなってしまう・・・。
 果たして桃子は、クマゴロウとともに、太古からの風の中に幸せを見つけ出し、前へと踏み出すことができるのだろうか。